2010年度 生理学I 定期試験問題
問題 1.
(1) 次の容積モル濃度を計算しなさい。
- (a) 5.84 gのNaClを水に溶かして1Lにした溶液(NaClの分子量は58.4)。
- (b) 8.77 gのNaClを水に溶かして1Lにした溶液。
- (c) 18.03 gの尿素を水に溶かして1Lにした溶液(尿素の分子量は60.1)。
- (d) 10 mg/mlの割合でグルコースが水に溶けている溶液(グルコースの分子量は180.2)。
- (e) 4.5 gのアルブミンを水に溶かして1Lにした溶液(アルブミンの分子量は67,000)。
(2) (1)の各溶液の容積オスモル濃度を計算しなさい。
(3) 赤血球を(a)〜(d)の組成の溶液に入れた場合、膨張するか、収縮するか、大きさは変わらないか?
- (a) 100mlあたり0.9 gの NaClを含む溶液(0.9%生食液または正常食塩水)
- (b) 1Lあたり7.5 gのNaClを含む溶液
- (c) 1Lあたり10.5 gのNaClを含む溶液
- (d) 1Lあたり18.03 gの尿素を含む溶液
問題 2.
(1) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
- (a) イオンはチャネルタンパク質を通しての拡散によって細胞膜を透過する。
- (b) 酸素や二酸化炭素などのガスは能動輸送によって細胞膜を透過する。
- (c) イオンは特定の輸送タンパク質への結合によって細胞膜を透過する。
- (d) 酸素や二酸化炭素などのガスは脂質二重層を通しての受動的拡散によって細胞膜を透過する。
- (e) イオンは脂質二重層を通しての受動的拡散によって細胞膜を透過する。
(2) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
- (a) 物質は能動輸送によって電気化学的勾配に逆らって蓄積する。
- (b) 物質は促進拡散によって電気化学的勾配に逆らって蓄積する。
- (c) 物質はイオンチャネルによって電気化学的勾配に逆らって蓄積する。
- (d) 物質は共輸送によって電気化学的勾配に逆らって蓄積する。
(3) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
- (a) ナトリウムポンプは細胞内Na+と細胞外K+を交換する。
- (b) ナトリウムポンプは細胞の容積を一定に保つために重要である。
- (c) ナトリウムポンプはATPを必要とする。
- (d) ナトリウムポンプではNa+の流出とK+の流入が直接連動している。
- (e) ナトリウムポンプはイオンチャネルである。
(4) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
- (a) 分泌はタンパク質を細胞膜に導入する方法である。
- (b) 細胞はエンドサイト—シスをエキソサイトーシス後の細胞膜の構成成分の回収に利用している。
- (c) 細胞はエンドサイト—シスを細菌や細胞残渣の取り込みに利用している。
- (d) 細胞はエンドサイト—シスを細胞外スペースからの大きな分子の取り込みに利用している。
問題 3. 視床下部−下垂体前葉―標的組織軸の制御系について,成長ホルモンを例にとり説明しなさい。
問題 4. 低血糖時には多くの内分泌器官が反応して血糖値を正常に戻そうとする。副腎皮質、副腎髄質、膵臓を介する内分泌反応の経路について、それぞれ簡潔に述べなさい。
問題 5. アドレナリンについて次の問いに答えなさい。
- 産生臓器とその中の部位、産生細胞の名称を書きなさい。
- アドレナリンの分泌を促す刺激を列挙しなさい。
問題 6. 成長ホルモンの直接代謝作用と間接作用についてそれぞれ説明しなさい。
問題 7. グルカゴンの主な作用を述べ、またグルカゴンが上昇する状況を2つあげなさい。
問題 8. 次の文章中の空欄A〜Lを埋めなさい。
- (1) 食後はグルコースの約6割は( A )として( B )に蓄えられる。
- (2) 空腹時は( A )が( C )というホルモンの働きで分解され、血液中にグルコースが供給される。
- (3) 糖尿病性ケトアシドーシスは( D )というホルモンが著しく足りなくなると発症する。( D )は( E )細胞から分泌される。
- (4) 糖尿病の細小血管障害である3大合併症は( F )、( G )、( H )である。また大血管障害としては( I )、( J )があげられる。
- (5) 妊娠中にはじめて見つかった糖尿病または耐糖能異常を( K )という。
- (6) 糖尿病の新しい治療薬として、腸管から分泌される( L )が注目されており、それに関連した薬剤が今年中に日本で発売される予定である。
問題 9. 薬の治療を必要としているバセドウ病の妊婦では、胎児甲状腺にどのような異常を生じる可能性があるか、またそれを防ぐ方法を説明しなさい。
問題 10. TSHの分泌に影響する重要な機構について説明しなさい。
問題 11.
(1) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 脳下垂体性小人症では思春期の成長促進は見られない。
-
(b) 思春期の成長促進は一般的に男子の方が女子より早く起こる。
-
(c) 長骨は新たな軟骨が骨端板に付加されることによって長くなる。
-
(d) リンパ組織の大きさは20歳よりも6歳の時点の方が大きい。
(2) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 骨の再構成は骨芽細胞と破骨細胞の働きである。
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(b) 長骨の幹の部分を骨幹部という。
-
(c) 分裂中の軟骨細胞は長骨の髄腔に分布している。
-
(d) 骨の有機物基質は軟骨芽細胞から分泌される。
(3) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 長骨は繊維性の結合組織から発生する。
-
(b) ほとんどの長骨は硝子軟骨の軟骨内骨化によって形成される。
-
(c) 骨の主な無機構成成分はカルシウムとリン酸である。
-
(d) 胎生期の骨の成長は主に甲状腺ホルモンによって調節される。
(4) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 成長ホルモンの分泌はIGF-1によって刺激される。
-
(b) 性ホルモンは骨端部の閉鎖の主な要因である。
-
(c) ビタミンDの過剰はくる病をきたす。
-
(d) 副甲状腺ホルモンは正常な骨形成に必要である。
(5) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 男性の配偶子は精子である。
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(b) 成熟精子はすべての染色体を持つ。
-
(c) 誕生時の卵巣には持つべき卵母細胞の全てがすでに存在する。
-
(d) 一次および二次精母細胞は有糸分裂によって分裂して精子細胞になる。
(6) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) Leydig細胞はテストステロンを分泌する。
-
(b) Sertoli細胞はテストステロンに反応してアンドロゲン結合タンパク質を産生する。
-
(c) Sertoli細胞は精細管に存在して、直接精子を産生する。
(7) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 卵巣周期において、卵胞発達の前卵胞腔相の開始はLHの調節を受ける。
-
(b) 卵巣周期において、卵胞腔相の卵胞発達はFSHおよびLH受容体の発現に依存する。
-
(c) 卵巣周期において、14日頃に排卵が起こる。
-
(d) 卵巣周期において、排卵は血漿LH濃度の急上昇によって起こる。
(8) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 排卵期の時期を黄体期という。
-
(b) 黄体期は血漿プロゲステロン濃度の著明な増加を伴う。
-
(c) 子宮筋はエストロゲンの影響を受けて増殖する。
-
(d) 卵巣周期において、エストロゲンは主に内卵胞膜の細胞で産生される。
(9) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 卵巣周期において、FSHおよびLH受容体がないと前卵胞腔相の卵胞は閉鎖する。
-
(b) 排卵後、破裂細胞はプロゲステロンを分泌する白体に変わる。
-
(c) 卵巣周期において、プロゲステロンは子宮内膜の十分な発達を促進する。
-
(d) 卵巣周期において、卵子が受精されないと、血中プロゲステロン濃度は低下し、これが月経を引き起こす。
(10) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 陰茎の勃起は交感神経性反射である。
-
(b) 勃起は陰茎の勃起性組織に血液が貯留することによって起こる。
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(c) 射精時に精子は前立腺および精嚢からの分泌物と混合される。
-
(11) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 受精は正常では子宮内で行われる。
- (b) 受精は排卵後3日以上たってから行われる。
- (c) 射精される正常精子数は2千万である。
- (d) 射精直後に精子は受精能力を持つ。
-
(12) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
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(a) 受精後、卵子は2回目の減数分裂を終了する。
- (b) 受精卵は黄体を維持させるためにhCGを分泌する。
- (c) 母体側循環と胎児側循環の間の物質交換のために透析型血流を確立することによって胎盤は胎児に栄養を与える。
- (d) 胎盤関門は非常に薄く,グルコースやアミノ酸を自由に透過させる。
-
(13) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
-
(a) 臍帯静脈血のPO2は母体動脈血と同じである。
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(b) 胎盤から分泌されるエストロゲンは妊娠末期になると子宮の興奮性を増加させる傾向がある。
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(c) 腎臓への血流量は妊娠中増加する。
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(d) 吸乳は乳汁産生と射乳にとって唯一の最も重要な刺激である。
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(e) オキシトシンは吸乳に反応して分泌される。
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(14) 以下の記述につき正しいものを全て挙げなさい。
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(a) プロラクチンは乳汁のすべての主成分の産生と分泌を促進する。
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(b) 乳汁産生はドーパミンアゴニストで抑制できる。
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(c) 成熟乳は初乳よりタンパク質成分が多い。
-
(d) 初乳は成熟乳よりカロリーが高い。
問題 12. 腎血流の自動調節について、どのような調節機構かを説明し、そのメカニズムについて述べなさい。
問題 13. 遠位尿細管での Na+の再吸収について説明しなさい。次のキーワードを含むこと。
キーワード:レニン、アンギオテンシン、アルドステロン、肺、心房性ナトリウム利尿ペプチド、傍糸球体細胞
問題 14. 次の文章の空欄にあてはまる字句を答えなさい。
ヘンレ係蹄下行脚ではNaClの透過性は( 1 )く、尿素の透過性は( 2 )く、水の透過性は( 3 )い。その結果管腔内のNaClの濃度は間質より( 4 )くな
り、尿素の濃度は間質より( 5 )くなる。ヘンレ係蹄の上行脚では水の透過性は( 6 )く、NaClの再吸収は( 7 )い。その結果尿細管液は( 8 )浸透圧にな
る。遠位尿細管ではADHの存在により( 9 )の再吸収が盛んになり管腔液の浸透圧は( 10 )くなる。
問題 15. 酸塩基障害について次の問いに答えなさい。
-
(1) 呼吸性アシドーシス、呼吸性アルカローシス、代謝性アシドーシス、代謝性アルカローシスそれぞれについて原因をひとつずつ挙げなさい。
-
(2) 代謝性アシドーシスに対する代償機構について、早期の代償機構と遅れて起こる代償機構に分けて説明しなさい。
問題 16. ある患者に10 gの14C標識イヌリンと、3H2O 10
mLを含む静脈注射が行われた。90分後に、イヌリンの血漿濃度は0.3 mg/mLであり、3H2Oは血漿1 mLにつき0.18
μLと等価であった。同じ期間内に、約5.2 gのイヌリンと 2.26 mLの 3H2Oが尿中に排泄された。次の項目を計算しなさい。
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(1) 全水分量
-
(2) 細胞外液量
-
(3) 細胞内液量
-
(4) 患者が正常成人男性と仮定したときのおよその体重